9.11にて。(2)

かなり間が空いてしまったが、「9.11にて。」の記事の中でこの日の持つもう一つの歳時的な意味について言及し損ねていたので、それについて少し書きたい。*1
以下の二つはほぼ確からしい。
a)東日本大震災では、政府・企業・一般人を問わず、先進諸国・資源輸出国・東アジア各国から幅広い支援が展開された。
b)アメリカの軍事力を持ってすれば本来捜索は困難でないはずなのに、ビンラディンの殺害は2011年の5月2日まで待たなければならなかった。
この二つを仮定するに、9月11日のdouble meaningは互いに独立でないように思えてくる。

 二つの世界大戦の教訓は、大国同士の戦争は絶対に許されないということで、1989年までは冷戦が、それ以降は旧ソ連諸国の民族紛争が先進諸国の連携を保っていた。旧ソ連諸国の独立運動も収束しつつあった90年代後半以降、新たな連携要因が必要となり、それがテロとの戦争だった。ここまではよくある陰謀論を引用したもので、内容に真実性はない。ただ、テロとの戦争が先進諸国の連携を支える一要因として結果的に役立ったというのは、あながち嘘ではあるまい。さて、(b)で述べたように、ビンラディンの殺害も達成された現在、何が連携要因を担っているのだろう。
 おそらくは、答えはインターネットである。以前の記事で述べたように、2001年の時点でのインターネットの普及率は今とは比べ物にならないぐらい低かった。少なくともここ10年のdrasticな変化には、その内容に依らずインターネットが何らかの形で関係しているはずである。ただ、この解答に対してはいくつかの疑問が伴う。
1)インターネットの登場により、ネット右翼と呼ばれる人々が国際的に増加し、かえって国家主義的な世論が強まってきているのではないか。
2)ネットコミュニティはたこつぼ化しており、連携をもたらす要素は限られているのではないか。

 仮定(a)で述べたように、世界各国の協調が今も保たれているのは概ね確かである。しかるに、疑問(1),(2)の答えはNoになるべきである。(1)については、基本的には解決されていて、今まで発言権の無かった中間・貧困層に位置する保守系の人々がインターネットの登場により発言力をもつようになったためだと考えられている。一部ヨーロッパ諸国が右翼系政党が票を伸ばしつつあるのは、移民の流入により既存中間・貧困層既得権益が損なわれつつあるためであって、ネットは第一要因ではない。
 難しいのは(2)の方で、多分ネットはあんまりたこつぼ化してないというのが事実だと思う。これはおそらくたこつぼ化した小さいコミュニティというのはあまり安定ではなくて、ある一定規模以上ではメディア化してしまうし、一定以下だと消滅してしまう、という現象が起こっているのだと思う。
 これについて、一つ注目すべき事実は「Amazon.co.jpの売り上げはlong-tailでない」というもので、詳しくは、

Amazonランキングの謎を解く: 確率的な順位付けが教える売上の構造 (DOJIN選書)

に、書かれている。
 同様にして、はてブのブックマーク数の分布がlong-tailでないとしたら、twitterのRT数の分布がPower-lawに従わないとしたら、あるいは、Google検索の大部分が既存の検索結果のコピーで処理されているとしたら、ネットコミュニティがたこつぼ化しているというのは怪しくなる。これについては、しかるべき手段が見つかれば、今後調査と考察をしたい。

9.11にて。 / Switch7
http://d.hatena.ne.jp/Omgyjya/20110911/1315755248

*1:ただ、なぜかもう一つの意味についても、注釈で言及している。